2025年4月23日から配信がスタートしたNetflix映画「新幹線大爆破」が好調です。スタートと同時に大きな話題となり、初週からNetflix週間グローバルTOP10(映画/非英語)で2位となったほか、日本(映画)では1位を記録し、幸先のいいスタートとなりました。
“暴走する列車”“乗り物そのものが爆弾と化す”——日常が突然、非日常に取って代わる物語は、観客の心を掴んで離さない普遍的な魅力を持っています。
この記事では、Netflixの新作映画「新幹線大爆破」が今、世界の注目を集めている理由を1975年版の同名映画(佐藤純彌監督・高倉健主演)と比較しながら探ります。


草彅剛のNetflix映画「新幹線大爆破」が世界を席巻! 高倉健の名作と何が違う?
最終更新日:2025年05月09日

まずは1975年のオリジナル版「新幹線大爆破」を知る
「新幹線大爆破」は、1975年の公開当時、ハリウッドで流行していた「タワーリング・インフェルノ」や「エアポート’75」に触発されて、東映が制作しました。高倉健、千葉真一、宇津井健といったキャスト、そして高度経済成長期の日本の社会状況を色濃く反映したテーマ性……。映画がヒットするための要素をてんこ盛りにして、5億円(現在の貨幣価値で20億円程度ともいわれる)もの制作費をかけた画期的なパニック映画でした。しかし、さまざまな要因から、興行成績で結果を残すことはできませんでした。
このオリジナル版は、東京発博多行きの新幹線「ひかり109号」に、時速80km以下に減速すると自動的に爆発する爆弾が仕掛けられたという衝撃的な脅迫電話から始まります。犯人は、経営に失敗した町工場の元経営者・沖田哲男(高倉健)ら3人。彼らはまず貨物列車を爆破し、その証拠とします。警察と犯人グループの攻防、パニックに陥る乗客と当局(国鉄・警察)の対応……本作は沖田たちの計画準備・実行と、それに対する当局の思惑という2つの軸で描かれています。
注目すべきは、佐藤監督が単なるパニック映画に留めず、犯人側の動機に深く切り込んだ点です。日本の高度経済成長の影で零細企業が倒産し、学生運動が力を失っていった時代背景を踏まえ、社会の底辺で苦しむ人々を犯人グループの主役に据えました。さらに、犯人像への共感的な視点————単なるテロリストではなく、経済成長から取り残された人々の絶望と怒りを象徴する存在———を盛り込むことで単純な善悪二元論を超えた複雑な人間ドラマが展開されるのです。
その犯人を演じたのは、寡黙で実直なイメージのある高倉健。悪であるはずの犯人に、人間的な陰影とある種の悲哀を感じ、彼の苦悩に感情移入してしまう。結果として「新幹線大爆破」は、パニック映画でありながら、高度経済成長下の日本の歪み、社会的不平等、そして進歩がもたらす犠牲といったテーマを鋭く問いかける作品として高い評価を得たのです。
オリジナル版の製作過程に立ちはだかった困難と残念な現実
オリジナル版は、キネマ旬報の読者選出ベストワンに輝くなど、実際に映画を観た観客からは高い支持を得ました。それでも興行が振るわなかった要因はいくつか考えられます。
まず、本作では国鉄(日本国有鉄道)の協力が得られなかったことが要因のひとつとして挙げられます。東映は実物の0系新幹線での撮影協力を国鉄に要請しましたが、当時、連続企業爆破事件などが世間を騒がせていたうえ、新幹線“大爆破”という刺激的なタイトルと内容に難色を示したのです。国鉄側のタイトル変更の要望は東映に受け入れられず、国鉄は一切の撮影協力を拒否する強硬な姿勢を取りました。
製作陣は隠し撮りやミニチュア特撮、セット撮影に大きく頼ることとなりました。しかし、この国鉄との対立こそが、作品のリアリティにつながったとも考えられます。公式の協力が得られず、ある種、ゲリラ的な撮影手法や、手作り感のある特撮が、生々しい質感を生み出し、結果的に社会に翻弄された犯人たちの物語と共鳴したともいえるでしょう。

画像はイメージです
さらに、公開後は鉄道専門誌「鉄道ジャーナル」が鉄道考証の誤りを指摘するなど、批判にも晒されました。
国内でのこうした評価とは対照的に、本作は海外では大きな成功を収めました。しかし、評価を得たのは作品で描かれた社会背景や人間ドラマではなく、「新幹線の速度がきっかけで爆破する」という本作のプロットともいえます。例えばフランスでは短縮編集版が公開され大ヒットとなりました。また、本作に影響を与えたともいわれる「スピード」は、純粋なアクション・スリラーとして世界的な成功を収めています。
リブート版「新幹線大爆破」はNetflixによる名作の再創造

リブート版の監督を務めるのは、「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」などで知られ、スペクタクル映像と人間ドラマの融合に定評のある樋口真嗣監督です。監督自身もオリジナル版の大ファンであることを公言しています。
舞台となる新幹線は「はやぶさ」に代わり、80km以下だった爆発条件も100km以下に変化します。

主人公が犯人側からはやぶさの車掌に変更になっている点からも、現代社会における危機管理や、主人公らの鉄道人としてのマインドに基づく行動といったテーマに焦点が当てられているのではないでしょうか。鉄道人の職務への誇り、極限状況下でのプロフェッショナリズム、人命救助への使命感といった、前向きなテーマは令和の時代ならではにも感じられます。

ちなみに、オリジナル版の主演・高倉健と草彅剛は、高倉の遺作でもある2012年公開の「あなたへ」で共演しています。草彅にとって高倉は、「僕の人生になくてはならない特別な人」。役どころの立場は違えど、同じ「主役」として、草彅演じる車掌の高市というキャラクターの完成度の高さも大きな見どころでしょう。
リブート版の製作上の利点と映像スタイル

リブート版は、最新のVFXや特撮技術を融合させたことで、映像に圧倒的な魅力を持たせました。オリジナル版製作時に比べると、撮影や映像技術も飛躍的に進歩しています。だからこそ、リブート版はオリジナル版よりも、大規模かつ、ダイナミックなアクション体験が堪能できるのではないでしょうか。激しく揺れる新幹線の車体や火花を散らす連結部、爆発や脱線を示唆するような予告編の映像からも、臨場感のあるストーリー展開が期待できます。

また、オリジナル版では果たせなかった、JR東日本の特別協力を得て製作された点も注目ポイントです。実際の新幹線車両(はやぶさ)や運行に関わる施設での撮影で、物語のリアリティが飛躍的に高まっています。

なにより、「新幹線」という存在自体、オリジナル版とは異なる描き方がされています。オリジナル版では、進歩から取り残された者たちによるテロの標的となり、リブート版では、現代のプロフェッショナルたちが安全と秩序を守るために奮闘する舞台です。
リブート版の製作にあたってJR東日本の全面協力を得たことで、オリジナル版で強調されたような体制との対立や社会への批判的姿勢は影を潜めているかもしれません。しかし、リブート版には、現代ならではのメッセージがあるはずです。


例えば、高度に発達したインフラの脆弱性、危機管理におけるテクノロジーの役割と限界、SNSによる情報拡散と乗客自らの働きかけ、デジタル化された社会における政府や警察の対応、そして集団心理と個人の行動様式……。今回のリブート版はオリジナル版とは異なるかたちで、現代社会が抱える不安や課題に対する間接的な問いかけをしているともいえるでしょう。
オリジナル版とリブート版の最大の相違点は登場人物と視点
オリジナル版とリブート版の最大の相違点は、やはり主人公の立場の違いにあります。オリジナル版で、高倉健演じる沖田は、社会から疎外された者の悲哀と怒りを体現し、犯人でありながら、観客に複雑な感情を抱かせました。
対して、リブート版で草彅剛演じる高市は、乗客の命を守るという職務に邁進する人物です。沖田が社会の歪みやその結果の敗者を象徴していたとすれば、高市は社会の機能やコンプライアンスを象徴しているのではないでしょうか。
また、リブート版では、政治家や著名YouTuber、修学旅行生たちなど、より多様な背景を持つ乗客キャラクターが設定されています。新幹線の中はある意味、現代社会の縮図。観客たちが、未曾有の大事件にどう絡んでくるのかも見どころでしょう。
普遍的なテーマに時代は関係ない

1975年の「新幹線大爆破」と2025年のNetflix映画「新幹線大爆破」は、半世紀という時間を隔てて、同じ新幹線爆破テロというスリリングな設定を扱いながらも、そのアプローチにおいて顕著な違いがあります。同時に、閉鎖空間における極限状態の緊張感や時間との戦いといった普遍的なテーマは共通しています。
時を経て過去の名作を再創造することは、単なる娯楽としてだけでなく、時代を映す鏡としての価値も持つはずです。
Netflixでは1975年のオリジナル版も配信中
現在のところ、Netflixでは1975年のオリジナル版も配信中。この機会に新旧併せてチェックしてみてはいかがでしょうか。
作品数 | 非公開 |
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月額料金 (税込) |
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