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  • ジブリ作品のひとつがNetflixで国内配信解禁 「火垂るの墓」から感じる変化の兆し

高畑勲監督によるスタジオジブリのアニメ映画「火垂るの墓」(1988年)が、2025年7月15日(火)からNetflixで独占配信される。昨秋から海外では190カ国で先行して同作の配信が行われていたが、国内でジブリ作品が配信されるのは初。

これまで頑なとも感じられるほど、国内のどこの配信サービスでも取り扱われていなかったジブリ作品。この記事では、「火垂るの墓」が国内Netflixに登場する意味について筆者なりに思いを馳せてみたい。

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身近に知る機会がないからこそ

2018年に高畑勲監督の追悼特別番組として放送されて以降、「火垂るの墓」はテレビ放送されていない。ではなぜここにきて数あるジブリ作品のなかでも「火垂るの墓」だけに配信許可が出たのだろうか。ここではその理由を考えてみるが、あくまで筆者の想像の範囲であることは、最初にお断りしておきたい。

筆者はちょうど清太と節子のように(彼らほど兄妹間の年齢は離れていないけれど)上が男の子、下が女の子の2人の子どもがいるのだが、自分の子供の頃を思い返してみると、もう少し“戦争を知っている人”が身近にいたように思う。

小学生の頃に近所のお年寄りの方が学校に来て当時の体験を話してくれる機会があった記憶があるし、祖父母の家に遊びに行くと、「おばあちゃんが子どものときの戦争の話」を寝る前の布団で聞くこともあった。身近な生きている人から実体験に基づいた話をしてもらう機会があった中で、確か「火垂るの墓」は小学校4年生くらいの頃、夏休みに友達の家に遊びに行って、録画してあったビデオで初めて観たと思う。

祖母の戦時中の話は、「おばあちゃんはその時子どもだったからあんまり覚えていないんだけれど」という前置きがだいたいいつもあり、実際そんなにヘビーな話は出てこなかった一方で、「火垂るの墓」の内容は重たすぎた。友達の家で「火垂るの墓」を観たあと、なぜか同作を観てきてしまったことを家で話せなかった記憶がある(気持ちが沈みすぎて話せなかったのかもしれない)。

その後も時々テレビ放送があり、家族は観ていても自分はできるだけ観ないようにしてきた。

そんな中で、先日子どものお迎えに行く途中に自転車を漕ぎながら、何となく昔のことに想いを馳せていたとき、「おばあちゃんは子どものときの話で戦争の話をしてくれたけど、そうか、今の子供たちは直接戦争体験者の話を聞く機会はほぼないんだよな。自分から見ると親の親世代(祖父母)が戦争を経験した人たちになるけど、自分の子供はそういう意味では教科書上の話になっちゃうんだよなぁ」と思った。

そして「そういえば海外のNetflixだと『火垂るの墓』が配信されていて結構話題みたい。どうにかうちでもVPN経由で観れないかな。いつか子どもに観せられたらいいな」と、そのときうっすら思った。

実感として日常が戦争になるとはどういうことなのか、知っておいたほうがいいと思うし、急速に身近に戦争を語れる人が減り、“史実”化していく中で、本当に貴重な作品だと思うからだ。

ジブリ作品をめぐる複雑な権利関係

ジブリ作品をめぐる権利関係は、少々複雑だ。映画制作時のリスク分散などの商業的な理由から複数社が出資する「製作委員会」方式がとられており、委員会メンバーである複数社が著作権を共有している。

さらに、ジブリ作品の海外の窓口権(分担された役割における権利を主導できる)はワイルドバンチというフランスの配給会社が持っており、ここに日本と北米は含まれていない。そのためワイルドバンチとの契約を獲得したNetflixが、日本以外の諸外国で先にジブリ作品の配信をスタートしたようだ。

今回国内で「火垂るの墓」の配信許可がおりた理由は定かではないが、「戦争を風化させない」という、社会的な意味も大きいのではないかと思う。Netflixのような多くの人が契約しているサービスで取り扱えば、若い世代まで広く視聴できる可能性が広がるはずだ。

なお、スタジオジブリは日本テレビの子会社であるほか、ビジネス的にはHuluを擁する日テレとNetflixは競合しているはずである(ただし、「火垂るの墓」の著作権は野坂昭如による同名小説の出版元である新潮社が保有)。それでも今回「火垂るの墓」の配信がNetflixでスタートするのは、国内で「火垂るの墓」を多くの人が観られる状態にしておくというのは、社会的な意義が非常に大きいから、という理由もあるように筆者は感じた。

海外での反応

配信がスタートした海外でも「火垂るの墓」は話題となり、絶賛する人が多かったようだ。YouTubeでは同作を鑑賞した人たちの様子や感想を映し出した「海外の反応」も多く再生された。

またネットでは印象的なレビューとして話題になったものも。ここではそのレビューから一部抜粋して内容を紹介してみよう。

この映画で興味深いのは、日本の作品であるにもかかわらず、日本人を犠牲者として扱うことなければ、アメリカ人を悪者扱いするわけでもないというところだ。むしろ、苦しんでいる子どもたちを冷たくあしらう日本の人々に対しての軽蔑が感じられる。タカハタは、戦争で真に失われるものは生命ではなく、汚れなき魂であると訴えているのだ。

「火垂るの墓」Netflixでの配信は7月15日(火)から

繰り返しにはなるが、「火垂るの墓」が最後にテレビ放送されたのは2018年で、少し時間が経っている。“二度目を観られない”トラウマ級の作品とはいわれているものの、Netflixで7月15日(火)から配信が開始されるこの機会に、もう一度新たな気持ちで鑑賞してみるのもありだと思う。

筆者の場合も小学生のときに初めて観て以降、通しできちんと鑑賞していない。大人になって、しかもこの物語で描かれているような子供の親となった今、また違う視点で作品に向き合ってみたいなと思っている。

なお今後、「火垂るの墓」の国内配信解禁を潮目に、ほかのジブリ作品も国内動画配信サービスに登場していくのかどうか、筆者と同様に期待している人も多いのではないだろうか。

Netflix概要

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