芸人バカリズムは、今や脚本家としても知られた存在。身近な日常の“あるある”を共感性高くシュールに描き出し、その世界観がクセになるという人も多いはずだ。
現在放送中のバカリズム脚本による地元系エイリアン・ヒューマン・コメディードラマ「ホットスポット」(日本テレビ系)は視聴率5%台をキープしているだけでなく、Netflixの「Top 10 Shows in Japan」(2025/1/27-2/2)では「SAKAMOTO DAYS」、広瀬すず主演の「クジャクのダンス、誰が見た?」(TBS系)、「薬屋のひとりごと シーズン2」に続く4位につけるなど、確実に視聴者の心を掴んでいる模様。
それに伴い、女子のあるあるを解像度高く描き、2017年度には優れたテレビドラマの脚本家に贈られる向田邦子賞を受賞した「架空OL日記」といった過去作にも目が向いたという人も多いのでは? この記事では、バカリズム脚本の魅力を紐解くとともに、過去作を厳選して振り返り!


【バカリズム脚本】独特の世界観がクセに! 「ホットスポット」のじわり人気で高まる「架空OL日記」など過去作への関心
最終更新日:2025年02月08日
素敵な選TAXI(2014年)
「素敵な選TAXI」(カンテレ・フジテレビ系)は、バカリズムが初めて連続テレビドラマの脚本を担当した作品。竹野内豊が過去に戻れる不思議でひょうひょうとしたタクシー運転手の枝分を演じた。
「人生の選択」という普遍的な深いテーマを扱いながら、枝分が過去に後悔する乗客をあくまで普通のタクシーと同じようなノリで過去に連れていく様子が実にシュール。コミカルなのに妙にリアリティがある会話劇も光った。基本的に一話完結のストーリーで、芸人の視点が活きた内容や展開に放送当時新鮮さを感じた人も多いはずだ。

架空OL日記(2017年:ドラマ/2020年:映画)
「架空OL日記」は、バカリズムが2006〜2009年にかけて、銀行員のOLになりきり執筆したブログをドラマ化(2017年)および映画化(2020年)した作品。本人が実家ぐらしのOL役で主演し、仲良しのOLたちと他愛もない会話で盛り上がる様子を描いた。
バカリズムの持ち前の観察眼が発揮され、作中に散りばめられた女性銀行員たちの会話や行動は極めてリアル。例えば、月曜の朝に寝坊したのに新しいストッキングを履いたせいで出発に余計に時間がかかってしまい、さらに上手くストッキングが履けなくて収まりが悪く不快、履くときにささくれが引っかかって不快といった内容だったり、みんなでお金を出し合って買った女子更衣室のハロゲンヒーターが故障してつかない問題を女子行員たちの一大事件として描いたり(笑)。
思わず「わかる~」と思ってしまう共感ポイントが満載で、「女子と女子」などの人気ネタを持つバカリズムは、ネタづくりで人や日常を冷静に観察し尽くしてきたんだろうなと思わされる。そうした芸人視点があるからこそ、ほかのドラマなどとは一味異なる、クセになるような世界観が出来上がっているのだろう。
なお、バカリズムがOLになりきって淡々と日常を綴った元ブログは書籍化もされている。
殺意の道程(2020年)
「殺意の道程」は、取引先社長に追い込まれて自殺した父親の復讐を目論む一馬(井浦新)と、いとこの満(バカリズム)による“慣れない”復讐劇を描く。復讐劇といえば、シリアスでハードボイルドな展開を思い浮かべる人もいるだろうが、本作はそうもいかない。例えば殺害計画を話し合う場がファミリーレストランに決まるなど、シリアスな復讐計画と、普通のおじさん2人のやりとりのアンバランスさが秀逸。笑えるはずのない復讐劇なのに思わず笑ってしまう。
バカリズムは復讐もの、シリアスもいけるんだと新たな発見を感じつつも、予想を裏切るようなラストの展開や、殺人計画を立てているのに笑いどころがあるのがやっぱりバカリズム脚本だなと感じる作品。
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地獄の花園(2021年)
「地獄の花園」は、普通のOLたちが実はヤンキー漫画さながらの派閥争いを繰り広げているという斬新な設定のコメディ映画。ステキなOL生活を夢見る直子(永野芽郁)の日常は、カリスマヤンキーOL蘭(広瀬アリス)の中途入社によって乱されていく。OLたちの派閥争いという現実世界のあるあるをヤンキーたちの抗争に置き換えて描いており、ヤンキー漫画特有のアツさと、OL社会のリアルが融合したカオスな世界観がバカリズムならでは。
川栄李奈(狂犬OL)をはじめ、菜々緒(悪魔OL)や大島美幸(大怪獣OL)など、キャスト各々のキャラ立ちも秀逸。

ウェディング・ハイ(2022年)
「ウェディング・ハイ」は、結婚式という人生最大のイベントを題材にしたコメディ映画。結婚式にかける想いがてんこ盛りの新婦(関水渚)と、どうにか穏便に済ませたい新郎(中村倫也)、2人の要望に冷静に応える敏腕ウェディング・プランナー(篠原涼子)のリアルな温度差を絶妙なコメディとして昇華している。
結婚式の経験がある人もない人も、「男女の違いってこうだよな」「新婦(新郎)の気持ちわかる~」などと共感度高く楽しめ、バカリズム脚本の妙が光る作品。
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