2025年3月31日からスタートした新NHK連続テレビ小説「あんぱん」の第1週(全5話)が4月4日までに放送された。
今田美桜が主演し北村匠海が相手役を演じる「あんぱん」は、幼児期にどの子でも一度は通るといっても過言ではない国民的キャラクター「アンパンマン」を生み出した漫画家やなせたかし・小松暢(のぶ)さん夫妻をテーマにした物語。今田が男勝りなヒロイン朝田のぶ役(幼少期:永瀬ゆずな)を、北村が柳井嵩役(幼少期:木村優来)を演じている。
本日(4/4)は明治8年4月4日に木村屋總本店が明治天皇に初めて酒種桜あんぱんを献上したことに由来する「あんぱんの日」ということで、この記事では元テレビ誌記者の筆者が朝ドラ第1週目をざっくばらんに振り返っていきたい。


視聴体験が多様化する今"朝ドラらしさ"を再考してみた。あんぱんの日に朝ドラ1週目を振り返る
最終更新日:2025年04月04日

【あんぱん第1週】初回視聴率は奮わずも、中園ミホが描く“強いヒロイン”に期待
まずは数字から見ていくと、「あんぱん」の初回世帯視聴率は15.4%だった。これは全話の平均世帯視聴率が歴代ワーストの13.1%だった前作「おむすび」の初回世帯平均視聴率(16.8%)を下回る結果ではある。
ただ、実際に1週目の全話を観た筆者としては、本作は前作とは違って朝ドラ王道パターンである戦前~戦後の波乱+実在の人物がモデルということもあり、木曜日・金曜日(4話・5話)あたりからは"これはもしかしたらちょっと目が離せなくなるかも”と期待感が高まった(前作は実在の人物というモデルなく平成ギャルを描いていったことが不評にもつながったのでは、という意見もある)。
「花子とアン」や「ドクターX ~外科医・大門未知子~」などで知られる中園ミホ脚本
「あんぱん」の物語を描く中園ミホといえば朝ドラだと「花子とアン」、ほかにも「ドクターX ~外科医・大門未知子~」や「ハケンの品格」などのヒット作を生んだ名脚本家のひとり。
自立心のある強い女性を描くことに定評があり、「あんぱん」は平均視聴率22.6%を記録した「花子とアン」(2014年)のヒロインにも通じるところがあるように感じる(「花子とアン」(2014年)は吉高由里子がヒロインを演じ、戦前・戦中・戦後を通じて夢を追い続けた「赤毛のアン」などの翻訳家・村岡花子の人生を題材としたストーリーが多くの人の心を掴んだ)。
「あんぱん」に話を戻すと、幼少期からのぶは“ハチキンおのぶ”(快活な女の子)などと周囲からいわれ、東京から高知に越してきた、やや気が弱そうにみえる嵩を同級生のイジメから守ろうとするなど男勝りで勝ち気な性格。戦前~戦後を舞台に、夫とともに苦難にも負けず夢を追っていく物語になっていくことが想像に難くない。
それだけでなく、中園ミホが手掛けた「ドクターX ~外科医・大門未知子~」や「ハケンの品格」では群れない・媚びない強い女性が描かれた一方で、「あんぱん」では「花子とアン」のように、夫婦の絆や葛藤も丁寧に描かれていく予感がある。“やなせたかし夫妻の物語”+“中園ミホ脚本”という組み合わせで、力強く共感できる女性の成長ストーリーがどのように展開されていくのか、筆者は楽しみになった。
多様化する視聴スタイルと朝ドラの今
昨今はNetflixやU-NEXT、Amazonプライム・ビデオなど、さまざまな動画配信サービスが普及し、TVerでは民放の多くの番組が見逃し配信されるなど視聴体験は多様化している。そんな中で、“らしさ”を貫いているように見える、1961年から続く“朝ドラ”の良さを筆者なりに再考してみたい。
結論からいうと、「朝ドラらしさ」は変わる時代だからこそ良いのでは、とも思う。
前向きで安心感のあるストーリー運びは健在
朝ドラの良さといえば、前向きで、ある種安心感のあるストーリー運びがひとつあるのではないだろうか。
「あんぱん」はまだ序盤も序盤なのでストーリーに関して想像の域は出ないものの、前述した通り戦後の混乱期を生き抜きながら創作に励む姿が描かれると予想される。夢を追い続けることの大切さを感じられるような、朝の時間帯に家族で観るのにもちょうどいい前向きさが魅力になっていくのではないか。そしてそこに、朝ドラらしい良さがあるように思える。
見逃しても追いやすく、意外と多様な視聴スタイルに対応
朝ドラは平日毎日新しい回が放送されるので、もしかしたら「放送が多くて追いづらい」と思っている人もいるかもしれない。だが、意外と見逃しても追いやすいのが朝ドラである。
土曜に1週間分のダイジェスト放送を行っているほか、NHKプラス(総合テレビやEテレの番組を放送と同時に、また放送後の番組を7日間視聴できるサービス)で配信もされているため、リアルタイムでなくてもついていける。また「あんぱん」に関してはAmazonプライム・ビデオでも第1話が無料で配信されている。
実際、筆者も3月31日から常にリアルタイムで放送を観たわけではない。筆者は30代子育て中の共働きライターなので、第1話と2話は家事の合間にNHKプラスを利用してスマホで視聴した。さらに日をまたいでNHKプラスで3~4話を少し遅れて視聴し、4話のラストで物語が動いたことで続きが気になってしまい、5話で初めて「朝8時の放送に間に合わせるため」の朝の行動を意識して、放送開始1分前くらいにテレビの前にスタンバイした(笑)。
昔から続く朝ドラではあるが、リアルタイムでテレビの前で観なくても、今では自分のタイミングで、好きなデバイスを使って観られるようになっている。
主役級の演技派俳優が大集結
朝ドラといえば、主役級の豪華俳優陣がゴロゴロと出てくるのも魅力のひとつだろう。
「あんぱん」でいえば、北村匠海演じる嵩の亡くなったお父さんが二宮和也で、産みの母は松嶋菜々子(自由奔放な振る舞いで嵩を翻弄していくらしい)、育ての父は竹野内豊ときている。
また、ジャムおじさんの由来の人物だと予想される風来坊のパン職人を阿部サダヲが演じるなど、画面を観ていてとにかく飽きない。
余談ではあるが、筆者は個人的に、アニメのジャムおじさんと阿部サダヲ(嵩に草吉が「住所不定のフーテンさ」と自分のことを言う場面がある)のイメージに初めは少しギャップを感じた。だが、幼少期の嵩やのぶと草吉(阿部)が交流する姿を観て、そうだこの人はあの社会現象にもなった「マルモのおきて」(2011年)で幼き頃の芦田愛菜や鈴木福と共演してたんだったと思い出した。
実は“タイパ”もいい朝ドラ
毎日15分という比較的短尺で、ストーリー的にも視聴者がストレスなく観られるのが朝ドラ。近年盛り上がっている1話が数分のショートドラマに比べたら長いが、それでも一般的な連ドラよりは1話ずつが短く、実はタイパがいいともいえる。
安心感のあるストーリー展開に加えて明るく前向きなメッセージがあり、観ていて気分的に疲れないので、精神的な視聴コストもほぼない。1日15分という短さ+安心して観られる前向きな内容は、変化が早く不安定に感じやすい昨今だからこそ、通勤時間や仕事・家事などの合間の「ほっとできる」時間として機能するのでは、とも感じる。
朝ドラ「あんぱん」の今後の展開に期待
ここまで「あんぱん」1週目を振り返り、朝ドラらしさを考察してみたが、朝ドラは「変わらない良さ」を持ち続けることで視聴者に安心感を与えてくれるはずだし、令和の時代でも愛され続けるのではないだろうかと思う。そして、そうなってほしいというのも、筆者のいち視聴者としての意見だ。
連続テレビ小説「あんぱん」の放送概要
最後に、ここでは放送概要をまとめておくので、「あんぱん」で描かれる人生の旅路が気になる方は、ぜひチェックしてみてほしい。
放送
NHK総合で【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分
※土曜はダイジェスト版の放送
NHK BSで【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
プレミアム4Kで【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
再放送
NHK総合で【毎週月曜~土曜】午後0時45分~1時
※土曜はダイジェスト版の放送
NHK総合で【翌・月曜】午前4時45分~5時
※翌・月曜は土曜版の再放送
NHK BSで【毎週土曜】午前8時15分~9時30分
※月曜~金曜分を一挙放送
プレミアム4Kで【毎週土曜】午前10時15分~11時30分
※月曜~金曜分を一挙放送
配信
NHKプラスで同時&見逃し配信
Amazonプライム・ビデオでは第1話無料

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